〜企業・大学・家庭がつながるインクルージョンの実践現場から〜
2025年9月2日、ブルームバーグL.P.東京オフィス(丸の内ビルディング)にて開催された「ブルームバーグOpen Office 2025」に参加しました。ブルームバーグ様は、2017年にACEに入会後、各種取り組みに非常に積極的に参加いただいております。本イベントは、障害のある学生の卒業後のキャリア形成をテーマに、企業・大学・保護者が一堂に会する貴重な機会となりました。
🏢オープニングと企業紹介
イベントの冒頭では、APAC地域採用部門統括のステファン・アギウス氏からのビデオメッセージが上映され、「当事者だけでなく、共に歩むご家族や支援者の皆さまも、インクルーシブな社会をつくる「主役」であると考えています。」と、このイベントの意義と重要性について言及されました。

<オープニングのビデオメッセージを送る ブルームバーグ アギウス氏>
その後、ブルームバーグ東京オフィスの高橋弦也氏より、同社の障がい者雇用に関する取り組みや、ACEとの連携について詳しい説明がありました。
ブルームバーグは1981年に創立され、金融情報サービスの透明性を確保し、関係者が公平な判断を行える環境を提供することを目的に設立された企業です。現在では、世界中で約35万の顧客が「ブルームバーグ ターミナル」を利用しており、グローバルな情報基盤を支える存在となっています。
社内では、社員同士がつながるコミュニティ活動が活発に行われており、障害のある社員とそのチャレンジを支援する有志で構成するAbilities Community (BABLE) によるボッチャイベントなどの企画も紹介されました。こうした活動は、インクルージョンの実践を社内文化として根付かせる重要な要素となっています。また、2021年度からACEが企画・運営しているオリジナルインターンシッププログラムにも参加しており、BABLEが主体となって運営に関わっている点が強調されました。

<取り組みについて紹介する ブルームバーグ 高橋氏>
障がい者採用においては、まず「どんな働き方がしたいか」「どんな環境要因があるか」を本人から丁寧にヒアリングし、それぞれの応募者と活躍できる領域を一緒に定義したうえで、社内にその環境が整えられるかどうかを判断します。採用は、人材と環境の両面がマッチしたときに実現するという考え方に基づいています。
採用後は、受け入れ部門とともに障がい理解のセッションを設け、業務内容や配慮事項について議論を重ねます。特定の部署に限定した採用は行わず、複数の部署での活躍を前提としており、定年制も設けていません。
さらに、2021年からは「アビリティズ・キャリアプログラム」として、約1年半のジョブトレーニングを実施。現在、3名の社員がこのプログラムを経て採用となり、2024年にはこのプログラムから正社員登用された社員もいます。進行性の重度の障がいがある方でも、
身体の状況に応じて「その時にできる業務」を担ってもらおうという柔軟な考え方が根底にあります。
社内では、障害のある同じ立場の仲間同士が支え合うピアグループも形成されており、実践的なサポート体制が整備されています。
💬 パネルディスカッション:企業のリアルな取り組み
登壇企業:ブルームバーグLP、日本IBM株式会社、株式会社電通グループ、株式会社エンカレッジ
各社からは、障害者雇用における実践的な取り組みと考え方が共有されました。

<自社の取り組みについて紹介する 株式会社電通グループ 濱崎氏>

<障害学生の就労についてアドバイスを送る 日本IBM株式会社 保科氏>
– ブルームバーグ:採用時に「どんな働き方がしたいか」を丁寧にヒアリングし、環境要因による症状の変化を前提とした合理的配慮を設計。ACEとの連携も進めており、支援者との協働体制を整えています。
– 日本IBM:特例子会社や障がい者枠を設けず、すべての社員に対して合理的配慮を提供する姿勢を貫いています。社内にはAlly文化が根付き、誰もが支援者になれる環境が整っています。
– 電通グループ:特例子会社「電通そらり」を始め、グループ各社、農福連携コンソーシアム、DEIパークなど、地域・企業・当事者が連携する共創型モデルを展開。障害者雇用を競争力の一つとして位置づけています。
– 株式会社エンカレッジ:支援者としての視点から、企業と大学の連携の可能性や、インターンシップ制度を通じた職業準備支援の実践例を紹介。
👥 当事者の声:職場での「小さなできる」を積み重ねる
ブルームバーグ社で勤務する中込さん(ASD・ADHDの診断あり)より、日々の業務内容や職場での工夫について紹介がありました。
– 苦手の分解:「障害によりできない」「他人と比較してできない」「できるけどやりたくない」に分類することで、対処可能な部分を見つける
– 「小さなできる」を積み重ねることで、自己肯定感と職場定着につながる
– 母親へのインタビューでは、保護者としての支援姿勢や、本人の意思決定を尊重する重要性が語られました
🔄 意見交換会:支援者同士の対話から見えたもの
大学関係者、保護者、企業担当者、障害のある社員がグループに分かれて意見交換を実施。以下のようなテーマが話し合われました:
– 自己肯定感の育て方と障害理解のプロセス
– 支援者の関わり方と本人の意思決定の尊重
– キャリアセンターとの連携や、企業との情報共有のあり方

<意見交換会の様子>
参加者からは「企業のリアルな声が聞けて安心した」「支援者同士のネットワークが広がった」といった声が多く聞かれました。
📝 クロージングと今後の展望
最後にアンケートを回収し、各企業からの採用情報やインターンシップの案内、今後の連携や参加機会についての説明が行われました。ACEとしても、今回のOpen Officeを通じて、障害のある学生のキャリア形成を支える支援設計のあり方や、企業との連携強化の可能性を再認識する機会となりました。
✨ 参加を通じての気づき
このイベントは、企業のリアルな声を聞き、支援者同士がつながる場として非常に有意義でした。ACEとしても、加盟企業間の連携をさらに深め、障害のある学生のキャリア形成を支える仕組みづくりに貢献していきたいと感じています。
<登壇したACE会員企業からのコメント>
株式会社電通グループ 濱崎伸洋氏
「私は知的障害や重めの障害のある方の支援をしてきた期間が長いのですが、大学に合格するほどのスキルをお持ちの障害のある方が、むしろそれ故に直面する様々な困難について知る、貴重な機会となりました。就活イコール自己否定の連続となるといった声は胸に刺さり、そのようなことのない社会の実現に向かわなくてはと改めておもいました。」
日本アイ・ビー・エム株式会社 保科浩子氏
「障がい者雇用に関わる多様な立場の方々と意見を交わせる、非常に貴重な機会でした。多角的な視点からの対話の重要性を改めて実感しました。特に、障がいのある先輩社員によるリアルな経験談には、働く上での工夫や前向きな姿勢に深く感銘を受けました。今後も、誰もが安心して働ける環境づくりに向けて、力を合わせて取り組んでいきたいと思います。」
ブルームバーグ 高橋弦也氏
「大学・ご家族・企業の方々は、それぞれの立場で障害のある方の活躍を支える環境づくりに取り組まれています。区分を超え、知識を共有し知恵を出し合い協力することで、より良い取り組みが広がると信じています。主役は当事者だけでなく、共に関わるすべての人です。今後も力を合わせ、この取り組みを進めていきたいと考えています。」