一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)は、2020年2月7日に第2回ワイガヤセミナーを開催しました。2019年の7月に肢体不自由もしくは内部障害のある社員を対象に開催された第1回に続き、今回は聴覚障害のある方に参加いただきました。
ワイガヤセミナー は、形式張ったビジネス・セミナーではなく、ざっくばらんにワイワイガヤガヤと普段考えていることを共有する新しい形のセミナーです。他社の障害のある社員とのネットワーキング作り、自身が成長するために考える機会の提供、障害のある当事者とともにACEの今後の活動を考えることを目的としています。
聴覚障害は、外から分かりにくい
会場となった損保ジャパン日本興亜日本橋ビルに聴覚障害がある13名の参加者が集まり、ACE会員企業メンバーのモデレーターとともにグループに分かれて、「障害がある方が本当にわかってほしいこと」をテーマにディスカッションを行ないました。
聴覚障害と言っても、当事者の状況はそれぞれに異なります。コミュニケーションを手話で行う方、音声認識ソフトを利用したテキスト変換ツールを利用する方、補聴器と話者の唇の動きを組み合わせて内容を理解する方など様々です。
当セミナーでは、各テーブル毎に手話通訳者にアテンドしていただき、音声認識ソフトが変換したテキスト情報を映し出すスクリーンを設置しました。
社会人になるまで、多くの参加者が共通に体験してきたこととして、
・音楽の授業や合唱コンクールで何の配慮もなく退屈で苦痛であった
・小さい頃はテレビ番組の字幕がなく内容が理解できなかった
・冠婚葬祭のマナーを周囲が教えてくれなかった
・電車で事故や遅延があった際、アナウンスの内容が全く分からなくて困った
・補聴器を付けていると聞こえると思われ早口で話された
・筆談を望んだが断られた
というのが挙げられました。一方で、聴覚に障害があると分かると、手話で案内してくれる人もいた、大学ではノートテークの支援をしてもらえたなど、理解ある方々への感謝の声も多数聞かれました。また、聴覚障害があると言えずに、聞こえたふりをしてしまったと自身の対応も別のやり方があったのではという意見も聞かれました。聴覚障害は、外見からは分かりにくいため、最初のコミュニケーションにおいてどう接するかが重要となってきます。
配慮をした上で、もっとチャレンジを
職場環境においては、どのような課題や苦労があり、それはどう改善していけばいいでしょうか。
参加者からは、仕事をしていく上で以下の課題が挙げられました。
・会議では、ディスカッションになかなか入っていけない。結果だけを知らされる。それがどう決定したかそのプロセスを知ることができない
・会議で複数の人が同時に発言してしまうと音声認識ツールに反映されず、内容が分からなくなる
・様々な支援機器があり、職場で提供されるが、それを利用するための配慮の教育や研修が同僚や上司に対して実施されていない
・音声認識ソフトは誤変換もあり、話者が早口になると認識ができない。ゆっくり話してとお願いし、最初の内はゆっくり話してくれるが途中から結局早口になりついていけなくなる
・会議で同僚には聞き返せても、幹部や役員には何回も聞きづらい
・メールで返信をお願いしても、電話がかかってきて対応に苦慮することがある
・紙に書いてとお願いしても面倒くさがられる、また字が判読できないことも
・飲み会では、多くの人が一斉に会話をするので聞き取れず孤立感を味わってしまう
誰もが働きやすく、能力を発揮できる職場環境の構築が必要です。会社として、必要な支援ツールの提供や手話通訳などの支援を行うこと、と同時に一緒に仕事を行う組織の仲間にどのような配慮が求められるかを正しく理解してもらうことの必要性を実感させられました。参加者の「自身が受けたい支援を明確にし、その上で様々な仕事にチャレンジしていきたい。だから会社もどんどん仕事を与えてほしい」という声が印象的でした。
セミナー終了後、あちこちで名刺交換や情報交換などの交流が行われていました。同じ障害のある方が部署に複数いらっしゃる方もいれば、一人孤立して悩みを抱えている人もいました。こうした会社の枠を超えたネットワーク作りがこのワイガヤセミナーで芽生えはじめています。