ACEオリジナルプログラム/相談会レポート 清水建設株式会社

学との連携部会 ―イベントレポート
ACEオリジナルプログラム/相談会レポート[2]

建設会社は障がい者にはムリと思っていたが働ける職種がたくさんあると知り、有意義だった

清水建設株式会社

日本を代表する総合建設会社の一つ清水建設株式会社は、障がい者雇用に大変積極的に取り組んできました。

2013年のACE設立以来の会員であり、世界のビジネスリーダーのネットワーク「The Valuable 500」にも加盟しています。後者は、障がい者が潜在的能力と価値を発揮できるよう、障害があっても活躍できる社会をつくろうという世界的な団体です。

2023年度のACE企業別オリジナルプログラム相談会は、WEBによる相談会が8月3日、23日、9月1日の3日間、対面による「オリジナルプログラム」が東京で8月29日から3日間、福岡で9月4日から2日間で開催されました。このレポートでは東京会場で開催された対面型プログラムの様子をご紹介します。

建設業は社会に貢献しながら人を育てる

対面型オリジナルプログラム初日は総合建設会社とはどのような仕事をしているのか、高層ビル・トンネル・発電施設などを始めとしたさまざまな事業内容が説明されました。建築・土木・営業・海外事業・エンジニアリングなどの部署から、第一線で仕事をしている中堅社員だけでなく、管理職の皆さんが丁寧に解説。7分野にわたって講義を聞く、座学の1日でした。

中でも最初にDE&I推進部から「清水建設のダイバーシティとエクイティ、インクルージョンの取り組み」について具体的に説明を受けました。

「社内には182名の障がい社員がいますが、障害のある人もない人も同じ職場・同じ職種、例えば施工管理・設計・施工支援・見積り・研究・人事・総務・経理などの、幅広い職種で働いています。建設会社の業務というと現場での工事に携わると思われがちですが、すべてにバック・スタッフという事務的なことを担当する仲間が必要で、障害の有無は関係しません。調査、調整、財務、営業、管理など建設には不可欠な領域でも協働しています。

障害がある社員が活躍できるための設備や環境づくりは、ずっと以前からバリアフリー、ユニバーサルデザインを手掛けてきたのでお手の物ですし、困りごとがあれば、イントラネットを使った相談窓口があり、問題の解決に社外の専門家の知見を入れることもできます」

ランチタイムには、障害のある社員だけでなくいろんな先輩社員が学生と一緒にテーブルを囲み、自分の経験した就職活動の苦労やアドバイスなどを語ってくれました。

「私は転職して障がい者枠で清水建設に入社しましたが、自分の障害をまず自分が理解し、職場の仲間にも分かってもらい、苦手なことを助けてもらっています」

「自分でできないことは抱え込まずに周囲に相談する。そして今より難しいことに挑戦し、業務の幅を広げていきたい。私の働く姿を社内外の人たちに見せることで、障害のある人たちに少しでも前向きになってほしいです」

2日目は技術研究所で移動支援ロボットと対面

2日目と3日目は中央区の本社から場所を移して、江東区越中島にある技術研究所へ。2日目の午前、広い施設の見学を終えると、午後は「技術紹介・体験」です。紹介されたのは視覚障害のある人の建物内外の移動を支援するロボット「AIスーツケース」。(AIスーツケースは2022年のACEフォーラムで、日本科学未来館館長の浅川智恵子さんに
よる基調講演で紹介され、当日の会場にも展示されました。詳細は『ACEフォーラム2022』報告書に掲載されています。)

このロボット開発は、清水建設が一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアムに参加して5社共同で行われています。浅川さんの紹介した「コンソーシアム版AIスーツケース」と並行して、清水建設は独自に「シミズ版AIスーツケース」も開発していて、センサーやアクチュエイターを増やしたり、スイッチを使った目的地選択、介助犬の動作から情報受信の方法を改良したりするなど、動きに特長を盛り込んでいます。そのシミズ版ロボットを見学・体験しました。

実り多かったグループワーク経験

2日目の最後と3日目の最初の研修は、延べ2時間を超えるグループワーク。このオリジナルプログラムに参加した学生に、ある課題が出されました。「もっと多くの人に清水建設を知ってもらうには、どうすれば良いかを提案する」という企画です。2日目はまずディスカッションをして、3日目にそれを発表するという形式です。ディスカッションでは率直な意見がたくさん聞かれました。

  • 大学を通じてACEのオリジナルプログラムを知って参加した。就活生には理系に限らずより多くの大学を通したPRがよい。
  • 気候危機などの環境問題解決に清水建設は貢献する、と社会全体にアピールする。
  • 参加してみて、「こういう仕事なら文系の障がい学生にもできる」と思った。
  • 技術研究所を公開して、来て、見てもらうともっとたくさんの人に清水建設の良さが伝わる。
  • 建設会社は体育会系のイメージで、障がい者は建設現場では働けないのではないかと思われている。
  • 働ける職種がたくさんあると分かって有意義だった。
  • こういうオリジナルプログラムや見学会があると、誰もが安心しやすい。
  • 障がい学生本人だけではなく、とくに両親に就職の選択先として清水建設のような企業がある、と知ってほしい。親たちは「自分たちが死んだら、この子の将来は」と、早くから不安を抱えている。

参加者は障害のある学生と保護者、支援者、障がい高校生も含める

オリジナルプログラム最終日はグループワークの発表からスタートしました。発表者の学生から、以下のような概要の「清水建設をもっと障がい学生に知ってもらうための提言」がありました。

「テーマは『コラボレーション』。対象は障害のある大学1、2年生から。障がい学生は早くから漠然とした不安を持っている。就活というよりも社会を知る、というコンセプトで清水建設の事業、職種、障がい者雇用について説明するイベントを開催する。参加者は学生と保護者、支援者、障がい高校生も含める。1日目はアクセスが楽な午後から、障害に負担のない最長3時間で見学や体験、講義を。2日目は任意参加のオンライン開催。同様の会社説明をパンフレットにして、大学、支援機関、医療機関に置く。紙媒体は保護者の信頼感を得やすいから」

オリジナルプログラムの最後の時間は、ハーバード・ビジネス・スクールが開発した意思決定を行うシミュレーション演習に社員もまじえて挑戦。それぞれが役割を与えられ、リーダーシップとチームワークをどう実現できるかを試すものです。賑やかな歓声も上がり、楽しく終了しました。

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