さらなる成長の機会へ
第3回ワイガヤセミナーをオンラインで開催

オンラインで参加した方々の顔写真(参加者と司会やモデレーターを行ったACE担当者)

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)は、2021年7月8日に第3回ワイガヤセミナーを開催しました。2019年7月に開催した第1回は肢体不自由・内部障害のある社員の方に、第2回は聴覚障害のある社員の方に参加いただき、3回目となる今回は、再び肢体不自由・内部障害のある社員の方を対象に、初のオンライン開催で実施しました。

ワイガヤセミナーは、形式張ったビジネス・セミナーではなく、ざっくばらんにワイワイガヤガヤと普段考えていることを共有する新しい形のセミナーです。他社の障害のある社員とのネットワーキング作り、自身が成長するために考える機会の提供、障害のある当事者とともにACEの今後の活動を考えることを目的としています。ワイガヤセミナーの企画・運営は、すべてACE会員企業メンバーが行いました。
参加者は14名で、うち6名が第1回に引き続いての参加でした。今回は第1回参加者が参加後、自身や社内にどのような変化があったかのフォローアップを兼ね、新規参加者を交えてさらに深いディスカッションを行いました。また、各参加者は、事前にストレングスファインダー(StrengthsFinder*)による診断を実施、結果の「5つの強み」を自己紹介などに活用しました。

両親への感謝に共感!
積水ハウス株式会社 林俊明さん講演

2018年のACEアワード グランプリ受賞者の積水ハウス株式会社 林俊明さんに講演をいただきました。右肩から指先まで自由に動かすことができない障害のある林さんは、同社の設計課に所属し、チームリーダーとして部下の指導・育成をしながら主に賃貸住宅の設計をされています。
2002年に嘱託社員として積水ハウスに入社した林さんは、2008年に1級建築士の資格を取得し、上司や同僚の推薦もあって2013年に総合職へと転換。2016年には1級施工管理技師資格を取得し、チームリーダーとして組織を牽引するなどキャリアを積み重ねてきました。
業務遂行にあたり工夫している点をいくつか紹介していただきました
講演を行う林さん
・建設現地でのお客様との打ち合わせは屋外になることが多く、両手で広げて押さえなければならない大きな図面やサンプル資料は小さく細分化したものを使用し、片手でも見せられるように変更。
・CADの作業では、マウスの設定を駆使して左手のみで主要操作をできるように変更。
・建設現場で登れない・入れない場所は自身で状況確認ができないが、同僚にカメラで撮影してもらった画像を確認するなどのサポートをもらう。
こうした工夫をしながら、誰もが住みやすい住宅の設計に従事し、自身が設計した物件で大阪市のハウジングデザイン賞に地元住民の方々からの推薦でエントリーされました。

林さんは、これまでACE会員企業向けの勉強会、障害のある学生のキャリアを考えるACEのセミナー、そして今回のワイガヤセミナーと機会があるごとに登壇いただいています。ACEアワードのグランプリ受賞時は、感極まって涙ぐんでしまい本当に伝えたかったことが伝えられなかった、だから機会をいただければ同じように障害があり苦しんでいる人たちのために積極的にお話ししたいと考えていらっしゃいます。
特に自身が子供を授かってからは、子供に障害がある親の想いを痛感されました。しかし、甘やかすことはなく、愛情をもった厳しさで育ててくれたおかげで今の自分があると両親への感謝の気持ちを一番に伝えたいと思うようになったと話されました。今、障害のあるお子さんがいらっしゃるご両親へ、将来の不安がある中、しっかりと愛情を持って育てることの大切さを伝えていきたいとメッセージされました。

「今後も設計者として、オーナー様、入居者様に喜んでいただける設計をしていきたい」と語った林さん。引き続き新しい資格や業務にもチャレンジし、業務・業種の範囲・知識を広げていきたいとのことです。また、障害のある人たちのための交流の場に積極的に参加し、生活をよりよくできる社会づくりに貢献していきたいと講演を結びました。

林さんの講演をふまえて、参加者はグループに分かれてディスカッションを行いました。講演者の林さんもディスカッションのグループに加わりました。各グループから下記の意見が寄せられました。
・設計という仕事が自分の仕事とも共通点があり、できないことを自分のできる形に工夫するヒントがたくさん得られた。
・健常者からのサポートは必要。その意味で人間関係はとても重要。サポートをしてもらったら、感謝を伝えることを大切にしていきたい。
・資格を取得して総合職へ転換されたのが素晴らしい、意欲をかきたてられた。
・健常者と同じように扱ってほしいという想いと配慮が必要という矛盾を考える機会となった。
なかでもどのチームからも共感を呼んだのは、両親への感謝の気持ちでした。「親の愛情について深く考えたことがなかった、親の気持ちに気づかされた」「両親への感謝が素晴らしい」との声が全てのグループから聞かれました。

自身が成長する機会を、企業と社会の成長への貢献に!
続いてのグループ・ディスカッションのテーマは、「コロナ禍の今、改めて障がい者が分かってほしいこと」です。第1回セミナーの議論では、通勤や業務の困難への配慮が多数を占めました。コロナ禍で、時差出勤や在宅勤務が拡大し働きやすくなったとの声が多く聞かれました。その上で、コロナが収束しても時差出勤や在宅勤務は継続してほしい、外出が困難な人へも就労機会の拡大になっていると意見が出ました。ただ、人が集まってアイデアが生まれるという場は少なくなっているという懸念も指摘されました。
また、在宅勤務が進み出社する社員数が減り、多くの企業で座席がフリーアドレスになっています。歩行器など必要な器具・機器を置く固定の場所がない不便さを訴える一方、上司に近くに座ってもらい相談がしやすくなったメリットも享受できています。
グループディスカッションの内容を発表している参加者
一方で全てがオンラインになり、一度も会ったことがない人との会議も増える中、自身の障害について話す機会がなくなったとの声も聞かれました。オンライン会議の画面上では車いすや杖を利用していることが分からないため先入観がなくなり良くなったという意見や自身の障害のことを知ってもらいにくくなり合理的配慮をお願いしづらくなっているという意見もありました。障害や必要な配慮を社内の同僚に知ってもらうためのコミュニティーを作り、そこで情報共有をしている企業もあり、それは各社で横展開できると運営にあたっての情報交換もされました。自身の障害について直接話す機会が減ってしまったが、やはり周囲に伝えておくことでちょっとした気遣いをしてもらえ、それが能力を発揮する原動力なっているとの意見も聞かれました。その一方で、障害のことを伝えると業務範囲や任される仕事が減ってしまうのではと危惧する声もありました。

今回のグループ・ディスカッションで際立っていたのは、第1回参加者のリードです。積極的な発言や初参加者への配慮や意見の促しなど上手に進行をサポートしていただきました。そして、自分が分かってほしいことは明るく伝えよう、自身の障害について話す際も後ろ向きにならずに、これはサポートしてほしいけど、これはできますよと明るく伝えようと投げかけていただきました。それが自身の成長する機会となり、企業・社会の成長に貢献できると感じさせられるセミナーとなりました。

*StrengthsFinder 世論調査と組織コンサルティングの米国ギャラップ社が「人は自分の弱みを改善するよりも、自分の強みに意識を向けそれを活かすことで最大の能力を発揮する」という考え方に基づき開発したツール。Webサイト上で177個の質問に答えていくことで、自分の強みを知ることができる。

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