一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)では、会員企業による定例会を実施し、各活動内容の報告と共有、障がい者雇用関連の勉強会を行っています。2021年5月18日にオンラインで開催した定例会で、ACEアワード2020特別賞を受賞したヤマトシステム開発株式会社の「在宅勤務チーム活動事例」紹介を行いました。事例は、ヤマトシステム開発のACE会員の吉村晃子氏、プロジェクトを推進した同社システム本部パートーナー戦略部の金子明奈氏、そして現場のリーダーとしてチームを率いている杉山佳光氏によりご説明いただきました。
※2021年4月の組織改編により「ITオペレーティングカンパニー」から「システム本部」に変更となっています。また新たに班長を設定し、業務管理者としてリーダーを置く形に体制の変更を行いました。
企業姿勢の浸透
ヤマトグループは、「地域から信頼される企業」を企業姿勢に掲げ、障がい者雇用の取り組みも含め、障がいのある方の自立支援を積極的に行っています。
「『地域から信頼される企業』という企業姿勢に基づいて、ヤマトグループでは公益財団法人ヤマト福祉財団と連携して、様々な障がい者の自立支援を行っています。」(吉村)
これまでヤマトホールディングスではヤマト福祉財団を通じて就労移行支援事業、障がい者施設・団体を対象とした福祉助成事業が行なわれてきました。また、グループ会社の株式会社スワンにおける障がい者の雇用・収入の確保や自立を支援するためのベーカリー事業(スワンベーカリー)も知られています。
ヤマトシステム開発においても、これまで障がいのある方の雇用を積極的に行ってきました。現場雇用としては、主にお客様から委託された運用業務(帳票関連、PCキッティング作業など)に加え、最近では自社のインフラ設備保守やシステム開発での雇用も始まっています。
また、知的障害のあるメンバーを中心に人事部門内での書類発送や清掃などの軽作業や他部署からの依頼に対応する「猫の手」と呼ばれる施策も行われています。
「今回ご紹介する、在宅勤務チームの事例は、これまで以上に障がい者雇用を推進し、事業に活かしていく、という想いのもと、現場で創出され、チームアップされた事例です。人事からの働きかけではなく、現場起点で障害のある方の力に着目し、企業として雇用することの意義を見出している点が注目です。」(吉村)
業務を切り分け、在宅勤務をスタート、企業の成長に貢献するチームへ
ヤマトグループとしては、これまでも障がい者雇用に取り組んでいました。当初は倉庫や人事部門での雇用が主でしたが、2018年からは部署単位での積極な取り組みも始まりました。身体に障害のある方の雇用は、すでに多くの企業で進んでいましたが、ヤマトグループでは、精神・発達障害のある方の採用も進めました。
「2018年に2名採用し、現場に配属しました。非常に高いスキルや能力がある方々で、当初の不安や誤ったイメージは払拭されました。しかし、残念ながら2名ともその後退職されてしまいました。」(金子)
何故現場に定着してもらえなかったのか、もっと笑顔で働いてもらうにはどうすればいいか、社内での調査・検討が始まりました。「働きたいが通勤が困難」という悩みを抱える方が多い事がわかり、業務を切り出して在宅で仕事ができれば、能力を発揮し戦力になってもらえるのではと考えました。2019年3月に6名を在宅勤務で雇用、その後メンバーを10人まで拡充しました。メンバーの業務調整を行う班長と全体を統括するリーダーをそれぞれ1名任命し、キャリアコンサルタント・社会福祉士資格者のアドバイザーがサポートする体制を構築しました。在宅勤務で、名刺や注文書のデジタル化のための入力作業、パワーポイント資料の作成などの営業支援業務を行っています。
「リーダーとして、業務依頼者と打合せを持ち、作業内容や要望、納期などの確認を行なっています。至急対応の依頼も多く、間に合わせるための業務の割り振りが大変ですね。営業支援活動では、『アポイントが何件も取れました』や『商談が進行中です。ありがとう』など依頼者から感謝の言葉が寄せられることもあり、メンバー一同でやりがいを感じています。」(杉山)
ミスを少なくするため、わかりやすい業務指示書を作成し、メンバーと仕事内容を共有することが重要だと話す杉山さん。最近は、コロナ禍でお客様訪問ができない営業担当者の依頼で、企業のホームページの問い合わせフォームを利用したセールスプロモーションも行なっているとのこと。
今では、社外のお客様からの業務依頼も受け、会社に貢献できる組織として成長しています。
在宅勤務にあたり、業務開始時に体調報告をシステムで行い、その状況を数値化して、管理者が部下の健康を管理しやすいよう工夫もされています。
「今後は、メンバーのさらなるスキルアップと成長のために、取り組むべきことや目標を明確化し、これからの自身のキャリアをよく考えてもらえるように、評価制度も整えていきます。」(金子)
障害があるということよりも、個人がそれぞれどんなスキルを持っていて、どのような可能性があるかが採用する時に重要だと感じたと話す金子さん。スキルがわかると、どの業務なら任せられるのかが明確になります。社内では、なかなか手が回らない作業を在宅勤務チームにお願いしてみようという流れが社内でできています。さらなる企業の成長に貢献できるチームとして期待をされています。