障がい学生インターンシップがもたらすポジティブな化学反応
ACEインターンシップ・レポート
ブルームバーグ L.P.

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)会員企業の合同企画として、障害のある大学生を対象にしたインターンシップを、2018年より開催しています。就業理解や自己の強みを認識するキャリアセミナーとも連動していることが特徴で、大学生は、ACEと繋がることで業種の異なる様々な企業のインターンシップに複数参加することができ、また企業側もACEを窓口として日本中の多くの大学とコンタクトすることが可能です。
また、ACEインターンシップとして開催することで学生は、さまざまなカルチャーを持つ企業をまとめて知ることができ、働き方や採用形態が複数あり、自身にとってどれが最適かを比較することもできます。

今回は、2021年9月に実施されたブルームバーグ L.P.(以下、 ブルームバーグ)でのインターンシップのレポートをお届けします。ブルームバーグのインターンシップは、人事のサポートの元、障害のある社員とそのチャレンジを支援する有志で構成するコミュニティ(Tokyo Abilities Community)が主体となり4日間のプログラムを実施しました。
(写真は、主にプログラムの企画・運営を行なったコミュニティ・メンバーのグローバルデータ部門の久津間 貴之さん、光野 聡さん、マーケティング部門の雨宮 未奈さん、人事部門の高橋 弦也さん)

業務データを利用した仕事体験!
4日間にわたるインターンシップ・プログラムは、コロナ禍を考慮し全日程をオンラインで実施しました。障害のある学生向けのインターンシップの選択肢が限られる中、実際の社会を学生がより深く経験できる場を提供するため、長期のインターンシップが企画されました。プログラムは会社紹介に始まり、現場で働く社員との交流(メンタリング)、シニア・マネージメントとのトークセッション、ブルームバーグのサービスを利用した業務の経験、オフィスのバーチャルツアーなどが行われました。障害のある学生が会社のことを知る機会となり、どんな仕事があり、どのような業務ができるのかを理解してもらうことにフォーカスされた内容でした。

なかでも参加学生が最も目を輝かせて取り組んだのが、お客様に提供している法人向け金融ソリューションであるブルームバーグターミナルを利用した業務体験でした。ブルームバーグターミナルは、リアルタイムで配信されるあらゆる市場のデータ、信頼性の高いニュースや独自のリサーチ、高度な分析機能、コミュニケーションツールを集約し提供するものです。学生の皆さんは、実際にブルームバーグターミナルにログインし、どのような情報が入手できるのかを確認し、またお客様に提供する情報の作成を行ないました。
ブルームバーグターミナル
実際に投資家などのお客様に提供するデータの作成を実施。投資対象の企業の業務内容、サービスの特徴などを簡潔に表現した概要データのチェック、修正を行ないました。元データは英語で提供され、それを各国の言語に直したものをチェックしますが、どの国のお客様にも分かりやすく伝えるためのガイドラインがあります。それに合致した翻訳になっているか確認し、そのガイドから逸脱されていれば修正する作業を学生の皆さんが体験しました。学生それぞれが関心のある業界の企業のチェックを行なってもらい、お客様視点でどのようなデータ提供が分かりやすく有益なのか、同じ業種でも規模やセールスポイントによってさまざまな違いあると、多くの気づきを得たプログラムとなりました。

実際に働く社員と対話、ニュースレポーターも登場?
さまざまな部門の社員に学生が話を聞くメンタリング・セッションでは、自身の障害のことをよく理解し、その上で悩みや自己分析を行い今後のチャレンジについての相談が行われました。メンタリング・セッションをどう活用すべきかきちんと準備をして参加してくれた方、英語で履歴書を作ってきたのでアドバイスくださいという方もいて、参加した学生の真摯な姿勢が感じられました。ざっくばらんに雑談したいという人もいて、お昼を食べながらカジュアルな話題で盛り上がることもありました。

【プログラム初日】コミュニティ・メンバーとインターン生とのランチ


【プログラム4日目】当事者社員との座談会


社員の方や一緒に参加した他の学生とカジュアルな雑談ができず寂しいという声が聞かれていたので、オンライン開催ではありましたが、学生の皆さんにとって大変良い時間となりました。

また、オンラインでのバーチャル・オフィス・ツアーも好評で、コロナ禍で実際にオフィス訪問ができない中、社員がどのような環境で働いているのかは、学生の関心も非常に高いものでした。
マイクを持った社員がニュースレポーター風にオフィスを紹介
社員がニュースレポーターのように登場してオフィスを紹介する中で、障害のある学生ならではのオフィスのアクセシビリティーに関する質問が多数寄せられました。お手洗いでの細かな設備がどうなっているかなど、採用担当者としての気づきも多かったとのことです。

シニアマネージメントと学生のオンラインでのトークセッション模様
シニア・マネージメントとのトークセッションでは、マネージャーやリーダーの視点から働くことのイメージが語られました。学生時代から社会人になるまでの経験やブルームバーグでマネージャーになってからのやり甲斐や困難をどう乗り越えたかを中心に語ってもらうことで、参加した学生に良い刺激となりました。

さまざまな社員の参画がもたらすポジティブな化学反応
人事部門のサポートのもと、社内の障がい者コミュニティ(Tokyo Abilities Community)のメンバーが主体となり企画・運営することで、バランスの取れたインターンシップ・プログラムとなりました。次年度以降もこの形を踏襲し実施される予定です。
いきなり障害のある方への配慮やサポートをお願いとなると参加社員のハードルも高くなりますが、まずはメンタリングで話を聞いてみようということであればぐっと参加のハードルは低くなります。この活動を続けていくことで、社員の参加者がコミュニティ・メンバー以外にも広まっていくと、障がい者雇用の重要性や必要な配慮へのサポートに対する理解も深まってくるとブルームバーグでは考えられています。
ランチをとりながらのカジュアルな会話からも、障害に対する新しい気づきも生まれてきます。いろんなチームから人が集まり、それぞれの部署で障害のある方々へのさまざまなオポチュニティがあると発見できる機会にもなりました。

今回、7部門17名の社員の方々が自主的に参加されました。また、実際に多くの障害のある学生の皆さんの話を聞くことで企業側もたくさんの気づきがありました。人事部門単独のプログラムではなくさまざまな部署、社員とのコラボレーションだからこそ起こるポジティブな化学反応に多大な成果を得て、ACEのインターンシップとも協業し、今後もより良いプログラムの実施が期待されます。

ブルームバーグのインターンシップに参加された学生の皆さんの声を一部ご紹介します。

<参加学生の声>
・お客様に迅速に正確な情報を届けるのだというブルームバーグの高い使命感と企業理念を学びました。
・さまざまな部署の仕事があり、どの部署でもコミュニケーションが大切だと改めて学ました。コミュニケーションをさらに改善できるようがんばりたいと思いました。
・自分の就職について少し実感が持てました。
・シニア・マネージャーとのトーク・セッションで印象的だったのは、働くことで人の成長が見られるということでした。
・当初は障害のある方々がどのようにブルームバーグで働いているのかを知る機会をいただければ十分と考えていましたが、職場での自分の特性との向き合い方だけではなく、障害の枠を超えて学生とは異なる社会人としての生活を送るために変えなければいけない意識を確認する機会となりました。
・これまで自分自身の障害について、よほど理解のある環境でないと開示は誤解を招いたり嫌な思いをするのではと思ってきました。周りの人々に、適切にそして具体的に何を手助けしてほしいかなどを示すことで、自分自身ももっと努力していけることがあると思いました。

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