企業と大学をつなぎ障がい者雇用を促進
第2回 学との連携部会懇談会を開催

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)は、障害のある学生の企業への就業をより推進するための情報交換・懇談会を2021年9月7日にオンラインで開催しました。ACEと大学関係者、各地の大学関係者同士のコミュニケーションを密にし、定常的に情報共有が可能なネットワークを築き、学生支援体制の強化に貢献することが目的です。

産学連携のネットワークをより強固に
当懇談会の推進リーダーである堀場製作所 グローバル人事部の島津 悠貴さんにお話をお聞きしました。
学との連携部会懇談会について教えてください。
島津
 以下の3つの観点に基づき実施したプログラムです。
・企業と大学の連携強化
・全国の大学同士のネットワーキング促進
・企業から大学への情報提供
昨年は、ACEフォーラムの関連プログラムとして実施しましたが、今年は、障害のある学生を対象としたキャリアセミナーと同日開催とし、キャリアセミナーに参加した学生の所属する大学関係者の方にご案内をしました。22の大学から22名の方(学生支援担当者やキャリアセンターの教職員など)にご参加いただき、ACE会員企業メンバーを交えディスカッションを行いました。障害のある学生の就活にあたっての課題などを情報交換し、企業からの視点も交えて学生支援体制強化へ貢献するのが目的です。
まずは、ディスカッションをするにあたっての情報・話題提供として、障害のある学生を対象にしたACEキャリアセミナーにオブザーバーとしても参加いただいた京都大学 学生総合支援センター 障害学生支援ルーム村田 淳 准教授より、京都大学における「障害のある学生の社会への移行に関するプログラムとリソース」についてご紹介いただきました。これは、障害のある学生が就職活動のための準備、就職活動中、卒業までの移行期、卒業後とそれぞれの期間にどのようなプログラムや支援を実施しているかを時系列にマッピングしたものです。

出典:京都大学 障害学生支援ルーム 社会移行に向けた取り組み 社会移行の全体像

図の黄色い部分は京都大学主導で行っているもの、青色は外部資源との連携プログラム、グリーンの部分は京都大学内のキャリアサポートルームというセクションです。村田 淳 准教授のご説明の後、京都大学で実施されているプログラムやリソースを参考に、自身の大学での取り組み、今後必要な施策、他の大学にはないユニークな取り組みなどを各々まとめていただく時間を設けました。そしてその内容をもとに4つのグループに分かれて30分間のトークセッションを2回行いました。

支援が必要な学生に支援を届けるまでの難しさ
トークセッションでは、どのようなトピックが話し合われましたか?
島津
 どのグループからも指摘があったのは、支援が必要な学生と支援機能を結びつけることに苦労されているということでした。自ら障害と就活を意識し、キャリアセンターの窓口を訪ねてくれる学生はいいのですが、漠然とした困難を抱えている学生がどのようにして適切な支援につながることができるかに課題がありそうです。障害のある学生の就活のスタートは、単位を取るのに精一杯で、他の学生に比べて遅れてしまうというようなこともあります。就活を始める前の段階から学業、生活、就活とトータルにアドバイスできるコーディネータが必要だとの意見も出ていました。

昨今のコロナ禍の影響などはどうでしょうか?
島津
 オンラインでセミナーやイベントへの参加、ネットによる情報の収集などできることが広がったメリットはありましたが、やはり実感を伴う体験の場が減っているとの指摘が多かったです。外部資源とも連携しながら、大学外との接点を増やしていくのが必要との意見が出ていました。
コロナ禍で大学内の組織や体制も変わっていき、コミュニケーション手段がオンラインになっていく中で、いかに学生とコンタクトを取るかが課題となっています。障害のある学生の母集団を正確に認識するのは難しく、どうしても個別対応になっているというのが現状のようです。

学生の不安を早期に取り除くための情報提供
企業の立場から見て、大学や学生に向けたどのようなサポートが考えられるでしょうか?
島津
 障がい者雇用は、一般的な採用や雇用と何がどう異なるのか?自分がやりたい仕事にチャレンジできるだろうか?など学生が持っている不安に対して、まずは障がい者雇用というものが画一的なものではなく、社会には様々な選択肢があるということをもっと伝えていければと思います。大学で学生の支援にあたられている方々と協働して、多種多様な障がい者雇用のあり方や企業ごとの最新の施策についての情報を早期から提供し、自己理解や就労理解を深め、就活に向けて準備していく時間を長くとれるようにできるといいですね。

懇談会に参加された方々の感想をお聞かせいただけますか。
島津
 他大学の事例や課題、企業の採用における考え方を聞くことができ大変参考になったとの声を多くいただきました。トークセッションが短かった、もっともっと話したかった、コロナが収束したら対面でお話したい、オンラインだと遠隔地から参加できるからありがたい、と次回に向けてのリクエストもたくさんいただきました。

そうした声を踏まえ、今後の展開をお聞かせください。
島津
 大学同士をつないで、企業視点の情報提供や情報交換を行うことに強いニーズがあると実感できました。今回は、自由にお話しいただくというものでしたが、次回はテーマを絞り、より深く、より具体的に、課題の抽出だけではなく、どうすれば解決できるのか、そのソリューションについてもアイデアを出していければと考えています。

関連記事

  1. インタビューに笑顔で答える藤﨑さん

    ACEインターンシップ・レポート
    成功体験の積み重ねが高いモチ…

  2. 障害のある学生・大学と企業間の就活のギャップを縮める
    第3回…

  3. ACEオンライン定例会で説明をするする高橋さん

    ブルームバーグ L.P.
    慶應義塾大学と協業し障がい者雇用ガ…

  4. プレゼンテーションを行うインターンシップ生

    ACEインターンシップ・レポート
    相互承認で自己肯定感を育む<…

  5. ディスカッションを行うキャリアセミナー参加者

    障害をマイナスからプラス思考へ
    ACE関西キャリアーセミナー…

  6. 障がい学生インターンシップがもたらすポジティブな化学反応
    A…

アーカイブ