障害のある先輩社員の活躍に触れて学ぶ
ACEキャリアセミナー2021

ACEインターンシップおよび個別相談会と連動した障害のある学生と企業・先輩社員をつなぐACEキャリアセミナーを2021年9月7日に開催しました。昨年に引き続き、本年もコロナ禍の状況を鑑みオンラインで実施しました。
キャリアセミナーは、先輩社員や企業の人事担当者から直接話を聞き、就職・就労に関する疑問や不安を解消し、学生・企業相互で理解を促進することを目的としています。企画・運営をACE会員企業のメンバーで行ない、下記の3つのアプローチで構成されています。
1.ストレングスファインダー(StrengthsFinder*)による診断結果「5つの強み」を参考に、自身の特性や可能性についてポジティブな関心を高める
2. ACE会員企業で実施するインターンシップを踏まえ、事前に「就業理解」を深める
3.障害のある先輩社員や、他の障害のある学生、人事系担当者等との交流を通じて、就職・就労に関する疑問や不安を解消し、理解と関心を高めると共に、ストレングスファインダーを通して「自己理解」を進め、今後のキャリア検討につなげる
上記アプローチのもと、参加した先輩社員の就労経験を聞き、2回のラウンド・テーブル(ストレングスファインダーの結果の考察による自己理解、就業理解)によるディスカッションを行いました。

学生の不安や期待に先輩社員がメッセージ
企業で働く同じ障害のある先輩社員とのグループ・ディスカッションでは、学生が普段就活するにあたり不安に思っていること、就職後どのような経験やキャリアを積んでいけるかなどの相談が持ちかけられました。

・障がい者の就職情報、就職後の働き方についてもっと知りたい
 =>企業やACEのような団体が主催するセミナー、イベントに積極的に参加して、直接人事担当者やその企業の社員の話を聞こう。
・就労にあたりどんな工夫をされているか?
=>遠慮せずに自分が出来ることを会社へ開示して必要な人材となれることをアピールしよう。その上で、企業で配慮してほしいことを伝えると良い。
・就職活動中に、障害があることをどのタイミングで伝えていいのかわからない
 =>面接時に配慮してほしい事項について伝えた。入社後も面談で上司や人事に相談している。
・障がい者枠で入社すると、その後の昇給や昇格の機会が少ないのでは?
 =>そもそも障がい者枠がない企業もある。また障がい者選考でも入社後のキャリアパスは障害のない社員と一緒という企業や入社時は障がい者枠だがその後経験を積み総合職へのキャリアチェンジできるという企業もある。どの形態が自分にとって安心して長く働けるかを見極めてほしい。

学生からのさまざまな問いかけに、先輩社員がこれまでの経験から丁寧に答えられていました。参加された学生のコメントをご覧ください。

・多くの企業の障がい者雇用の取り組みを紹介いただき大変参考になった。
・ストレングスファインダーを通じて、それまで気づかなかった自分の強みを知ることができた。
・先輩社員のスピーチに強く心を動かされた。自分と同じ特性の先輩社員の皆さんがやりがいを持って仕事に取り組まれていることに励まされた。
・今後もこうしたセミナーや企業でのインターンシップを多く開催してほしい。

自身の経験や知見が未来ある学生に役立つことの幸せ
本年度ACEキャリアセミナーの推進リーダーである 株式会社ニチレイフーズ 人事部 人財開発グループの森本 亘さんにお話をお聞きしました。

今年度のACEキャリアセミナーについて教えてください。
森本
 事前に学生の皆さんにストレングスファインダーを受講いただいて、インターンシップや個別相談会と連動するセミナーです。今年は、29大学53名の学生さんに参加いただきました。精神・発達障害のある学生さんが全体の約6割を占めています。
当日は、下記のプログラムを実施しました。

    1. ガイダンス / ACE紹介
    2. ストレングスファインダー紹介 / 企業での就業について
    3. 先輩社員紹介・スピーチ
    4. 大学関係者からのご挨拶
    5. ラウンドテーブル① 自己理解
    6. ラウンドテーブル② 就労理解

参加された学生の皆さんからの満足度も大変高いものでしたね。
森本
 アンケート結果によると、どの項目も大変満足・満足で9割から10割の評価をいただけ、良い内容と時間を提供できました。前章のコメントにあるように、多くの気づきがあった、同じ障害のある先輩社員の企業での活用を知れて勇気づけられた、またこうしたイベントに参加したいと嬉しい感想をたくさんいただいています。
次回以降の開催に向け、何か改善すべき点や課題はありましたか?
森本 全国から参加していただけるという点でオンライン開催のメリットがありましたが、一方当日接続でトラブルがあった際の対応や参加者同士がちょっとした雑談で仲良くなったり連絡先を交換できるような時間作りが難しいといった課題もありました。同じ障害のある学生と出会う機会は少なく、互いに情報交換や相談できるようになれるともっと良かったと思います。新型コロナウイルスの感染が収束しましたら、実際に会場に集まってセミナーを実施し、また遠隔地の方や外出が困難な方にも参加いただけるようオンラインを併用した形で実施できればと考えています。

ACEキャリアセミナーの意義をどのように感じられていますか?
森本
 どのように就職活動すればいいんだろう、就職後どのように企業に合理的配慮を求め、その上でどのように力を発揮していけばいいんだろうなど、企業や先輩社員から直接話を聞くことができるこの機会は、学生さんにとって、大変有意義なことだと思います。一方、企業側にも大きなメリットがあります。就活をしている学生さんがどのような情報を求めていて、何に困っていて、何を希望されているのかが分かります。また、参加した先輩社員にとっても自身の経験が多くの後輩たちの役に立てられることで、社員自身のモチベーション向上にもつながっています。
参加した先輩社員から「障害がありながら働くその苦労と改善ノウハウを他人にシェアする機会は普段ありません。このようなアウトプットの機会をいただいたことで、少しでも自身の経験が未来ある学生の希望につながるのであれば、こんな幸せはありません。」と感想をいただきました。学生と企業の双方にとっても大変価値のある活動だと思っています。

*StrengthsFinder 世論調査と組織コンサルティングの米国ギャラップ社が「人は自分の弱みを改善するよりも、自分の強みに意識を向けそれを活かすことで最大の能力を発揮する」という考え方に基づき開発したツール。Webサイト上で177個の質問に答えていくことで、自分の強みを知ることができる。

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