「超短時間雇用」が拓く新しい働き方
障害と高等教育に関するプラットフォーム形成事業と協業して定例会を開催

東京大学 先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 准教授の近藤武夫 氏

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)では、会員企業による定例会を実施し、各活動内容の報告と共有、障がい者雇用関連の勉強会を行っています。2019年7月19日の定例会では、ACEの活動とも連携させていただいている「東京大学 障害と高等教育に関するプラットフォーム形成事業(以下、PHED(フェッド))」の運営機関である東京大学 先端科学技術研究センターとのコラボレーションで開催しました。

障がいがある学生が社会で活躍するためのセルフアドボカシー
東京大学 先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 准教授の近藤武夫 氏に障害がある学生に対する様々な取り組みについてご講演いただきました。2007年、DO-IT Japanという障害がある子供たちが参加するサマースタディのプログラムから取り組みを開始。DO-IT Japanは、参加した子供たちを長期的にバックアップし、その中から日本の社会のリーダーとなる人材の育成を目指しています。中心となるのは、全国から応募があり選出された10人のメンバーによるスカラー・プログラムで、2007年当初から参加したメンバーには、ドローン・パイロットの会社を起業して活躍している方もいらっしゃいます。
また、インクルーシブな教室を作りたいという学校を対象にスクール・プログラムも実施。音声読み上げソフトなど各種支援ツール利用しての指導法の作成などが行われています。
「セルフアドボカシー、自己権利擁護と呼ばれるものですが、必要な配慮を自分から求めていくことが必要です。私困っているんだと声をあげてくれることは大歓迎。しかし、それだけではなく、求めたい配慮を相手に分かりやすくストーリーとして届けることが重要です。どんなニーズがあるのか、それは決して温情主義ではなく、合理的配慮として障害がある方々の権利として認められてきています。申し訳なさそうに言う必要はなく、必要なことは必要と声をあげる、その上で自身のパワーを発揮する、そうしたことをDO-IT Japanでは参加者に伝えてきています。」と近藤氏は話されました。

現状の雇用制度では就労機会がない方へ「超短時間雇用」で道を拓く
そして、現在取り組まれている、多様な人々の雇用参加を可能にする新しい働き方の創出研究プロジェクト(略称 IDEA:Inclusive and Diverse Employment with Accommodation)も紹介いただきました。これは、障がい者雇用が前提としていない働き方が必要な方々に新しい働き方を提案します。例えば、週5、6時間だったら働けますという人は、障がい者雇用ではカウントできず、企業としても雇用が難しいのが現状です。
IDEAのキーコンセプトは、「超短時間雇用」。基本的に週30時間以上の労働が求められる従来型の障がい者雇用にあてはまらない精神障害や発達障害、難病などを理由に長時間の労働が難しい方々を主な対象とし、週あたり数時間程度のごく短い時間から働けるようにするスキームです。現在、法定雇用率にはカウントできませんが、集中力が必要な単一の定型業務を企業や組織の担当者から切り分け、その仕事を「超短時間雇用」利用者にお願いすることで、担当者が本来の業務に時間と労力を費やすことができ、企業にとってもメリットがあります。こうした働き方が可能になれば、現在社会問題となっている人手不足の解消への効果も期待できます。

障がい者の学びと生活を支援するATライブラリー
講演に先立って、PHEDが所有する障害のある大学生の「学びやすさ」「生活しやすさ」をアシストする支援技術「AT(Assistive Technology)ライブラリー」のデモと体験会を行なっていただきました。
AT ライブラリー体験会
ACE会員も「これはオフィスでぜひ活用したい」、「障がい学生のインターンシップで利用できそう」など、多くの気づきや今後の活動に活かせると、PHED担当者と情報交換を行いました。

文・写真:栗原 進

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