ACEインターンシップ・レポート
相互承認で自己肯定感を育む
株式会社堀場製作所

プレゼンテーションを行うインターンシップ生

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)会員企業の合同企画として、障害のある大学生を対象にしたインターンシップを、2018年より開催しています。就業理解や自己の強みを認識するキャリアセミナーとも連動していることが特徴で、大学生は、ACEと繋がることで業種の異なる様々な企業のインターンシップに複数参加することができ、また企業側もACEを窓口として日本中の多くの大学とコンタクトすることが可能になります。
2020年は、新型コロナウィルスの影響で多くの企業がオンライン相談会の実施となりましたが、安全対策をしっかりと取り、自社でインターンシップを実施した株式会社堀場製作所(以下、堀場製作所)の事例を紹介します。

仕事マップの作成と学びのプレゼンテーション
2020年9月8日から3日間に亘り、京都にある堀場製作所本社で障害のある大学生を対象としたインターンシップが実施されました。参加したのは、聴覚、精神・発達に障害のある大学生5名。学生は、公共交通機関で会社に通勤し、社員と同様の勤務時間に就業することで、会社で働く生活リズムを体験できるようになっています。
社員インタビューを行うインターンシップ生
プログラムでは、社内見学のほか、5人の学生が協力して自社製品(分析機器)による実験や、3人の職種の異なる社員へのインタビューを行い、それらから理解した内容をもとに、堀場製作所の様々な部署・職種同士の繋がりの全体像を表す『仕事マップ』を作成するグループワークに取り組みました。最終日には社員の前で、完成した『仕事マップ』をグループで発表し、またインターンシップで自身が何を学んだかについて、個人でプレゼンテーションを行いました。3日間という短期間ではありますが、会社にどのような部署・職種があり、どのように相互に関わり合っているかを知り、そして入社後も重要なビジネス・スキルとなるプレゼン資料の作成や人前での発表を体験しました。

“混ざる”ことで生まれる新しい成果
このインターンシップのプログラムを策定・運営した堀場製作所 グローバル人事部の島津 悠貴 氏に話をお聞きしました。

インタビューに答える島津さん今回のインターンシップ・プログラムの策定にあたり考慮した点はどのようなことですか?
島津
 自己肯定感を持ってもらい、それを周りの相互承認で下支えして、自分の持ち味や社会で果たせる成果につながる強みを持って帰ってもらえるようプログラムを構成しました。初日は緊張気味で硬くなっていた学生たちが、最終日に表情豊かで自信に満ち溢れた姿を見て、短期間でも意義のあるものにできたと手応えを感じました。
もう一つ、プログラムの根幹に置いたのは、ACEの目指す「企業の成長に資する」という企業の戦力としての観点です。「私は、これしかできません。なので事務職をやらせてください。」という姿勢では、企業の求める人材イメージとマッチしない、ということを、直接的ではないですが、感じてもらえるよう心がけました。企業として合理的配慮の提供に取り組む、その上であなたは何がしたいのか?という問いに答えてもらう。それを踏まえて様々な職種を紹介すると、「これしかできません」から「これをやってみたいです」と前向きな発言を多くしてくれるようになりました。

最終日のプレゼンの模様を拝見いたしましたが、学生の皆さんが自信を持った様子で、しっかりとプレゼンされていましたね。
島津
 学生から、「意外と自分がきちんと論理を組み立てて、人前で話せることを知りました。実務で段取りする力をさらに伸ばしていきたい。」と感想をもらいました。まさに目標としていた自己肯定感が発揮されていました。また、「チームで活動する中で互いの障害を理解しあい、課題をどう解決するかの想像力が育まれた」とのコメントもあり、グループワークや関わり合いを通して、それぞれの新たな可能性に気づくことができたと思います。
日を追うごとに5人の中で自然と役割分担ができ、一つの職場の縮図を見ているようでした。「自分の失敗にチームのメンバーが向きあってくれた。」とチームワークが醸成されていったことを感じました。

『仕事マップ』の発表に、学生からはおそらく見えにくい法務・総務・広報・人事などの間接部門や他にも様々な部署の役割もきちんと加えられていました。それぞれの部署の細かな仕事もきちんと言及されていて驚きました。
島津
 実際に学生がインタビューしたのは、営業、開発、生産現場の社員だったのですが、それぞれの社員が一緒に仕事をする部署との連携や関係性についても説明してくれました。会社とは、さまざまな部署や職種、人々から構成されていることを理解してもらえたと思います。
インターンシップでの成果を発表する学生

「お客様に始まり、お客様に終わる」、「おもしろおかしく仕事をする」など社員にも共通する思いが学生からも聞かれました。
島津
 会社の製品・サービスだけでなく、その会社の社風がどのようなものか知ることは、その会社で働きたいと思う大切な要素だと思います。

来年のインターンシップに向けて、なにか改善したい点、課題などはありますか?
島津
 短期間のインターンシップのプログラムをどう作るかは、なかなか難しいと思います。様々な障害の特性があり、また参加する学生のモチベーションや関心もまちまちです。仕事では他者とのコミュニケーションが重要ですので、一般的なコミュニケーションに依存しがちなプログラム構成になってしまいます。しかし、それでは自閉症スペクトラムなどコミュニケーションが苦手な方には合いません。
また、障害があるというと、こちらも配慮をしすぎてしまい、「私はもっと成長したい。チャレンジしたい。」という要望に応えられえないこともあります。障がい者雇用に起こりやすい1つのケースとして、配慮が前に出すぎて、その方の可能性を限定してしまうことがあります。インターンシップを実施することであらためて、無意識のバイアスが働く側にも雇用する側にもあるなという気づきがありました。

ACE合同でインターンシップを実施する意義、今後の期待についてお聞かせください。
島津
 「混ざることから生まれる凄さ」を実感しました。身体障害のある方と精神・発達障害のある方が混ざる、混ざって様々な企業で職場体験をする、これはとても稀有な経験だと思います。混ざることで、自分は配慮を受けるだけの立場ではなく、自分とは違う障害や、人間同士の関わりに配慮する立場にもなりうるということに気づき、チームの中で自分が発揮できる強みを発見する、そこから新しい何かが生まれる、これを実現できるのがACEだと思いました。
各企業で実施したインターンシップで得られた経験や知見を横展開して、さらに良いプログラムや成果が生まれるよう尽力していきたいと思います。

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